FRP加工用ドリル形状に関する大学との共同研究成果の技術レポートを公開 ENG-REPORT-022
東京電機大学と行ったFRP加工用ドリル形状に関する共同研究の成果について、当社R&DセンターHPにて新技術レポート「ドリルの逃げ角がGFRP加工熱に与える影響とその評価 ENG-REPORT-022」を公開しました。
研究開発取り組み開始の経緯
当社というよりは私個人が以前よりFRP製品の穴あけに使用するドリルは、鋼材用を研いで使用していました。その作業は難しく一般的ではないと各方面の方々から指摘されたのがきっかけです。
研究開発で得られた成果
逃げ角の異なるドリルを用いたFRP穴あけ工程のハイスピードカメラと赤外線カメラによる観察に加え、加工により発生する切り屑を熱分析技術によって評価を行った結果、ドリル形状や回転数の条件違いと切り屑の発生形態や加工熱との関係、並びにこれら条件の違いによるFRP劣化への影響に関し、従来解明されていない部分までわかったことが最大の成果です。
研究開発で感じた課題、難しさ
手作業によりドリルを研いだあとの形状の再現や、大学との共同開発であるために学会での発表も当初より視野に入れていたために、数年にわたり試行錯誤が必要でした。
研究開発の内容に関する技術レポートから感じたこと
この技術レポートからはFRPの加工とドリル形状に関して解明されていなかった未知の部分を多く読み取れるものとなりました。多くの方に一読いただき、FRP加工やそれに用いるドリルの開発や設計の一助になれば幸いです。
※共同研究開発にご尽力いただいた東京電機大学田村昌一教授からも概評をいただいております。
概 評
本研究報告書は,株式会社FRPカジによるガラス繊維強化プラスチックのドリル加工に関する詳細調査であり、従来の経験則に基づいた加工プロセスとその材料への影響を定量的に分析しています。特に,日々の加工現場での疑問に焦点を当て、製品性能に直接関連する材料の品質劣化に及ぼす加工プロセスの影響を実験的に調査しています。
研究の方法論は、通常NC工作機械を使用するところを、現場の実際の条件を再現するために手作業による穴あけ加工で行われました。これにより、NC加工と手加工の比較,および手加工の実験の難しさに関する有益なデータが得られました。
成果として、ドリル加工を行うと穴内壁の樹脂基材に対して熱影響が避けられないことが示されました。ただし、逃げ角の大きなドリルで高回転数で穴あけすることで、熱影響による基材の劣化抑制の可能性が確認されました。
一方、現場で求められる課題として、工具摩耗と加工熱の関連も上げられます。今回の成果は比較的、初期摩耗段階の加工プロセスの調査となっており、ぜひ今後の研究では、工具摩耗も含めた加工熱と材料の熱分析に関する調査が行われることを期待します。
総じて、株式会社FRPカジによるこの研究報告書は、手作業ベースのFRP成形業界における技術革新の重要な一歩であり、その成果は業界内での技術進化と研究開発のモチベーション向上に寄与するものと期待されます。
2024年12月18日
東京電機大学工学部機械工学科 教授 田村 昌一