株式会社 FRPカジR&Dセンター メールマガジン
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2026年9月16日
第11回:ENG-REPORT-004(Part 2)「3次元形状を有するFRP製品の手仕上げ後の表面粗さ測定結果」
~実際にどう検証したのか? 試験条件の全貌を探る~+SolidWorks-クリップの作り方
<目次> ─────────────
・前回(Part 1)のおさらい
・試験プロセス・手法
・次回予告
・モデリング技術+動画
<前回(Part 1)のおさらい> ─────────────
こんにちは。
FRPカジR&Dセンター 入社3年目の山北 桜子です。
前回(Part 1)では、3次元形状を有するFRP製品の解放面について、
手仕上げ後の表面状態を数値で確認する必要がある、という背景を整理しました。
平面の解放面については、これまでの技術レポートで手仕上げ後の表面粗さを評価していました。
一方で、曲面やおわん型のような3次元形状では、
工具の当て方や力のかかり方が場所によって変わりやすく、
平面と同じように仕上がるとは限りません。
そこで今回は、どのような3次元形状のサンプルを使い、
どのような条件で表面粗さを測定したのかを確認していきます。
技術資料はこちら
「3次元形状を有するFRP製品の手仕上げ後の表面粗さ測定結果」技術資料_ENG-REPORT-004

<試験プロセス・手法> ─────────────
1)評価サンプル作製
今回の評価では、まず3次元形状のFRP成形品から、
評価用サンプルを2種類作製しています。
サンプルのもとになった成形品は、ハンドレイアップ法で成形されたものです。
元の成形品は、直径約150mm、高さ約300mmの立体形状をしています。
この成形品から、
側面にあたる部分を 100mm×100mm で切り出したものが Cartridge A です。
Cartridge A は、成形品の側面から切り出しているため、
円筒の一部のような形をしたサンプルになります。
一方、成形品の先端部にあたる部分を 100mm×100mm で切り出したものが Cartridge B です。
こちらは側面ではなく先端側から切り出しているため、
ゆるやかに曲がった、おわん型に近いサンプルになります。
切り出した後は、どちらのサンプルも外側の解放面について、手作業で仕上げを行っています。
なお、サンプルの切り出し自体も、ディスクグラインダーによる手作業で行われています。
2)表面粗さの測定方法
測定は、20±1℃で管理した計測室で行われ、
測定機には SURFCOM 1400D-3DF(東京精密社製) が使われています。
測定方向は、それぞれ2方向です。
Cartridge A では、円筒の側面に沿って、
左右に位置を変えた2か所を測定しています。
レポートでは、この2方向を X-L方向、X-R方向 と呼んでいます。
Cartridge Bでは、おわん型に近い曲面に対して、
交差する向きの2方向を測定しています。
レポートでは、この2方向をX方向、Y方向と呼んでいます。
つまり、どちらのサンプルも1方向だけで判断せず、
測る場所や向きを変えて、仕上がりの違いを確認しているということです。
3)測定条件と補正方法
測定項目は、Ra・Rz・Pt の3つです。
あらためて整理すると、次のような見方になります。
・Ra:表面全体の凹凸を平均的に見た値
・Rz:一定範囲の中で、凹凸の差がどれくらいあるかを見る値
・Pt:測定した範囲全体で、いちばん高い山といちばん低い谷の差を見る値
RaとRzについては、決められた測定範囲の中で5か所を測定し、その平均値を計測結果としています。
レポートでは、この測定範囲を決める条件としてカットオフ波長が設定されています。
カットオフ波長という言葉は少し難しいですが、
表面の細かな凹凸を評価するときに、「どのくらいの長さの範囲で凹凸を見るか」を決める条件です。
測定条件としては、測定長さは 4.0mm、カットオフ波長は 0.8mm、測定速度は 0.30mm/s です。
測定条件には、フィルタとしてガウシアンフィルタが設定されています。
これは、測定データを表面粗さとして比較しやすい形に整えるための処理条件です。
詳しい計算方法までは踏み込みませんが、
同じ条件で比較するために必要な設定だと理解しました。
今回の測定で特に重要なのは、Cartridge A と Cartridge B で傾斜補正の方法が異なる点です。
測定では、表面そのものの細かな凹凸を見るために、傾斜補正を行っています。
傾斜補正とは、サンプル全体の傾きや大きな曲がりを差し引いて、
表面の細かな凹凸を見やすくするための処理です。
Cartridge A では、最小二乗直線補正が使われています。
これは、測定方向で見るとほぼ直線面に近い形状だからです。
一方、Cartridge B では、最小二乗曲線補正が使われています。
こちらは曲面を測定しているため、曲面そのものの大きな形を差し引いたうえで、
表面の細かな凹凸を見る必要があるからです。
つまり、同じ表面粗さ測定でも、平面に近い部分と曲面部分では、
測定データの整え方が変わるということです。
ここを間違えると、曲面そのものの形まで「粗さ」として見てしまう可能性があるため、
3次元形状の評価ではとても大事なポイントだと感じました。
3次元形状の表面粗さを測るときは、ただ測定機を当てればよいわけではなく、
サンプルの形状に合わせて、どのように補正するかが結果の見え方に関わってきます。
今回のPart 2では、結果を見る前に、どの形状を、どの方向から、
どの条件で測ったのかを押さえておくことが大切だと感じました。
特に3次元形状では、サンプルの形そのものが測定結果に影響するため、
測定方向や傾斜補正の考え方を理解しておくことが、
Part 3の結果を読むうえで重要になると感じました。
<次回予告> ─────────────
次回 ENG-REPORT-004(Part 3) では、いよいよ測定結果を見ていきます。
Cartridge A と Cartridge B で、Ra・Rz・Pt の値にどのような違いが出たのか。
また、円筒形状に近い部分と、おわん型に近い曲面部分で、
手仕上げ後の表面状態にどのような差が見られたのかを整理します。
今回のPart 2では、3次元形状の表面粗さを測るときに、
形状に合わせて測定方向や傾斜補正を変えていることを確認しました。
次回はその測定結果から、手仕上げで表面の細かな凹凸をどこまで整えられたのか、
そして3次元形状ならではの課題がどこに出やすいのかを、私なりに読み解いていきます。
<モデリング技術+動画> ─────────────
〈モデリング作業のコツ〉
今回の動画は
「SolidWorks-クリップの作り方」です。
・上記の概要に該当する動画のURL
1. 「前面」を選択し、スケッチを作成。
2. 直線コマンドを指定し、クリップの始点となる線を描きます
3. 直線コマンドのまま、キーボードの「A」を押すと円弧に切り替わります
※SolidWorksの時短テクニックの一つです
4. マウスを動かして円弧を描いて、クリックで確定
5. そのまま続けて操作で、再び直線モードに戻ります
6. 3から5を続け、クリップらしい「巻き込み形状」を作る
7. スマート寸法で長さ、R等を定義します
8. 「右側面」を選択し、円コマンドを選択します
9. クリップ軌跡の始点の点をクリックし、円を描きます
10. 円の寸法を定義します(例:Φ2mm)
11. 「スイープボス/ベース」コマンドを選択し、スケッチ輪郭で円を選択します
12. パスでクリップの巻き込み形状を選択し、押し出します
クリップ完成
・本モデリング技術の応用例
「スイープボス/ベース」コマンドは、単純な押し出しでは作成しにくい、
一定断面を持つ曲線形状を作成できるコマンドです。
たとえば、次のような形状に応用できます。
・クリップ
・針金部品
・配管・パイプ
・ホース
・手すり
・取手
・バネ形状
・ケーブルガイド
特に、断面形状は一定だが、通る経路が曲がっている部品に有効です。
今回のクリップ作成では、
線と円弧で描いた経路に、円形断面をスイープさせることで、
押し出しでは作れない滑らかな曲線形状を作成しました。
この技術は、線材加工や配管設計など、
実務でもよく使われる基本的なモデリング手法です。
