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2026年10月15日
第12回:ENG-REPORT-004(Part 3)
「3次元形状を有するFRP製品の手仕上げ後の表面粗さ測定結果」
~得られたデータから見えた課題と応用可能性~
<目次> ─────────────
・前回(Part 2)のおさらい
・結果・考察
・まとめ
・次の技術レポート予告
<前回(Part 2)のおさらい> ─────────────
こんにちは。
FRPカジR&Dセンター 入社3年目の山北 桜子です。
前回(Part 2)では、3次元形状を有するFRP製品の解放面について、
どのようなサンプルを使い、どのような条件で表面粗さを測定したのかを整理しました。
評価サンプルは2種類です。
側面部分から切り出した、円筒の一部のような形状がCartridge A。
先端部から切り出した、おわん型に近い曲面形状がCartridge Bです。
どちらのサンプルも、外側の解放面を手作業で仕上げた後、
Ra・Rz・Ptという3つの指標で表面粗さを測定しています。
今回はその続きとして、 Cartridge AとCartridge Bの測定結果を確認し、
3次元形状の手仕上げ後の表面状態にどのような違いが出たのかを見ていきます。
技術資料はこちら
・「3次元形状を有するFRP製品の手仕上げ後の表面粗さ測定結果」技術資料_ENG-REPORT-004

<結果・考察> ─────────────
1)仕上げ前後の外観で見えたこと まずレポートでは、
3次元形状成形物の表面仕上げ前後の外観が示されています。
外側の面は解放面であり、仕上げ前はGFRPの素材の色である薄茶色に見えます。
一方、内側の面はゲルコート層が最外層にある成形面のため、灰色になっています。
その後、外側の解放面について表面仕上げを行い、
最外層にサフェーサーを塗布したことで、外側の面も内側と同じように灰色になっています。
私はここを読んで、FRPの表面状態を見るときには、
「型に接していた成形面」と「型に接していない解放面」を分けて考える必要があると改めて感じました。
今回評価しているのは、もともと凹凸が出やすい解放面を、
手仕上げによってどこまで整えられるか、という点です。
また、切り出したCartridge AとCartridge Bについては、
加工前後において加工端面の剥離等は見当たらなかったと記載されています。
Cartridge Aは円筒状の形状から切り出した曲面を持つサンプル、
Cartridge Bは先端部から切り出した、おわん型に近い曲面サンプルです。
どちらも平板ではなく曲面を含むため、平面よりも仕上げや測定が難しそうだと感じました。
2)Ra・Rz・Ptの測定結果
次に、表面粗さの測定結果です。
今回の測定では、Ra・Rz・Ptの3つの指標で表面状態を確認しています。
Raは、Cartridge Aで0.448〜0.874μm、
Cartridge Bで0.404〜0.485μmを示しており、
すべて0.9μm以下の値でした。
Raは、表面全体の凹凸を平均的に見た値です。
そのため、Raが0.9μm以下に収まっているという結果から、
3次元形状の解放面であっても、
手仕上げ後の表面粗さをRaとして0.9μm以下まで整えられたことが分かります。
Rzは、Cartridge Aで3.081〜5.453μm、
Cartridge Bで2.308〜3.072μmでした。
Ptは、Cartridge Aで4.932〜8.330μm、
Cartridge Bで3.340〜4.696μmでした。
Rzは一定範囲の中で、Ptは測定した範囲全体で、山と谷の高低差を見る指標です。
Raだけでは平均的ななめらかさしか見えにくいですが、RzやPtを見ることで、
局所的に大きな凹凸が残っていないかを確認できます。
レポートでは、Cartridge AのX-R方向が全体を通じて高めの値を示している以外は、
Ra・Rz・Ptのすべての表面粗さの値がほぼ同等であることが分かったとされています。
私はここを読んで、表面仕上げの評価では、「平均的になめらかか」だけでなく、
「一部に大きな凹凸が残っていないか」まで見る必要があるのだと理解しました。
3)Cartridge AのX-R方向で値が高くなった理由
測定結果の中で、レポートではCartridge AのX-R方向が、
全体を通じてやや高めの値を示したとされています。
この原因を確認するために、
Cartridge AのX-R方向について、断面曲線と粗さ曲線を確認しています。
その結果、断面曲線にはシャープなピークや、
広がりのある山のような形状が見られたとされています。
そして、そのような凹凸が、最小二乗直線補正を行った後も粗さ曲線に表れ、
表面粗さの数値を大きくしたと考察されています。
レポートでは、この原因について、
表面仕上げ作業の誤差が主原因と推測されています。
私はここを読んで、手作業では工具の当て方や力の入り方なども、
仕上がりのばらつきにつながる可能性があるのではないかと考えました。
特に3次元形状では、平面と比べて一定の姿勢で工具を当て続けることが難しそうです。
ただし、今回のレポートでは、その差を感覚ではなく、
Ra・Rz・Ptという数値と、断面曲線・粗さ曲線から確認している点が重要だと思いました。
4)傾斜補正法による測定結果への影響
今回のレポートで、私が特に大事だと感じたのは、
傾斜補正法によって測定結果の見え方が変わる可能性がある、という点です。
前回のPart 2でも整理した通り、
Cartridge Aでは最小二乗直線補正、
Cartridge Bでは最小二乗曲線補正が使われています。
Cartridge Aは、測定方向で見るとほぼ直線面に近い形状です。
一方、Cartridge Bは、おわん型に近い曲面形状です。
そのため、同じ表面粗さ測定でも、
サンプルの形状に合わせて補正方法を選ぶ必要があります。
レポートでは、Cartridge Aについて、
最小二乗直線補正と最小二乗曲線補正で得られた結果を比較しています。
その結果、Cartridge AのX-R方向のPtで最大9.5%程度の差異が認められた以外は、
補正方法の違いによる顕著な違いは認められなかったとされています。
一方、Cartridge Bでは、Ra・Rzについては大きな違いは見られなかったものの、
Ptについては補正方法によって大きな差が確認されています。
特に、Cartridge Bを最小二乗直線補正で評価すると、
Ptの値が3倍近くになっていたと記載されています。
Ptは、測定範囲全体の中で、
いちばん高い山と、いちばん低い谷の差を見る指標です。
Cartridge Bは、おわん型に近い曲面形状です。
そのため、曲面を直線として補正してしまうと、
本来はサンプル形状そのものの大きな曲がりである部分まで、
粗さの差として残ってしまう可能性があります。
つまり、表面の細かな凹凸だけを見たいのに、
曲面そのものの大きなカーブまで含めてしまうことで、
Ptの値が大きく見えてしまうということです。
一方、最小二乗曲線補正では、
曲面そのものの大きな形を差し引いたうえで、
表面の細かな凹凸を見ることができます。
私はここを読んで、3次元形状の表面粗さ評価では、出てきた数値だけを見るのではなく、
「その数値がどの補正方法で出されたものなのか」まで確認する必要があると感じました。
同じサンプルを測っていても、
補正方法が形状に合っていないと、
特にPtのように測定範囲全体の高低差を見る指標では、
結果が大きく変わって見える場合があるのだと理解しました。
<まとめ> ─────────────
ENG-REPORT-004を読み終えて、私が一番大事だと感じたのは、
3次元形状のFRP製品でも、手仕上げ後の表面状態を数値で確認することで、
仕上がりの程度やばらつきを具体的に見られるということです。
今回は、Cartridge AとCartridge Bの手仕上げ後のRaが、いずれも0.9μm以下となりました。
一方、Cartridge AのX-R方向ではRa・Rz・Ptが他より高めとなり、
レポートでは表面仕上げ作業の誤差が主原因と推測されています。
そして私が特に印象に残ったのは、
同じサンプルを測っていても、補正方法によってPtの値が大きく変わる場合があることです。
最初は「表面粗さなら、測定機で数値を出せば分かる」と単純に考えていました。
でも今回のレポートを読むと、3次元形状では、
どこを、どの方向で、どのように補正して測った数値なのかまで確認しなければ、
結果を正しく読み取れないことが分かりました。
表面仕上げを「見た目できれいかどうか」だけで判断するのではなく、
数値と測定条件をセットで見る。
これが、今回のレポートから私が一番学んだことです。
<次回予告> ─────────────
次回からは ENG-REPORT-005
「自社加工したFRP穴加工用Drillの形状と加工物のX線CT評価」 を取り上げます。
これまでのENG-REPORT-003では穴あけ加工精度、
ENG-REPORT-004では3次元形状の表面仕上げについて見てきました。
次回のENG-REPORT-005では、 FRPの穴加工に使用するDrillそのものの形状と、
加工後のFRP内部の状態をX線CTで確認した内容を読み解いていきます。
穴をあける工具の形状が、加工物にどのような影響を与えるのか。
外観だけでは見えにくい内部の状態を、どのように評価しているのかを、
私なりに整理していきたいと思います。
各種技術レポートはR&Dサイトの一覧からご確認いただけます:

