株式会社 FRPカジR&Dセンター メールマガジン
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2026年1月16日
第3回:ENG-REPORT-001(Part 3)
「表面に凹凸のあるFRP製品の手仕上げ後の表面粗さ測定結果」
~得られたデータから見えた課題と応用可能性~
<目次> ─────────────
・前回(Part 2)のおさらい
・結果・考察
・まとめ
・次の技術レポート予告
<前回(Part 2)のおさらい> ─────────────
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
こんにちは、山北 桜子です。
前回は、解放面のまま/手仕上げ/型成形の3種類の面を用意し、
表面粗さ(Ra・Rz・Pt)と表面プロファイル(断面のうねり・平行度)を評価する手順を確認しました。
測定の狙いは、面の作り方の違いが数値としてどう表れるかを見極めることでした。
技術資料はこちら
・「表面に凹凸のあるFRP製品の手仕上げ後の表面粗さ測定結果」 技術資料 ENG-REPORT-001
<結果・考察> ─────────────
■ 結果
まずは外観についてです。
評価面である Surface A を上向きに確認すると、解放面のままの Surface sample A は光の反射が散って見え、
凹凸が目視で確認できました。
型成形の Surface sample C はゲルコート層が最外層のため、外観はグレーでした。
表面粗さの結果です。
解放面のまま(Surface sample A)に対して、手仕上げ(Surface sample B)は
Ra・Rz・Pt が「77~85%」改善していました。
具体的には、手仕上げ面の Ra は 3.48 という値で、
手仕上げの効果が数値でも確認できたと感じています。
ただし型成形と比べると、手仕上げの粗さはおおむね一桁(約10倍)大きいことも示されています。
ここは「どの面にどこまでの平滑さを求めるか」を先に決めておく必要があると受け取りました。
ばらつきについては、Surface sample Aは Ra・Rz ともにばらつきが大きい一方、
Surface sample Bは大きく抑えられていました。
それでも残っている揺れ幅が「平均値に対して最大で約30%」ある、
という点は実務での受入れ条件の設計に活かしたい学びです。
さらにSurface sample Cは、評価指標(Ra/Rz/Pt)や測定位置・方向の違いによっては、
平均値に対する散らばりが100%を超えるケースもあり、
“平均値が小さい=つねに均一”とは限らないことを示していると感じました。
要するに、手仕上げは粗さ値を大きく改善してくれる一方で、
絶対値では型成形の低粗さには届かない——この二点が今回の要所だと私は理解しました。
断面曲線(代表例)では、解放面特有のミクロな凹凸が手仕上げによって
大きく緩和されていることが確認できました。
一方で型成形と並べて見ると、手仕上げ面には微小な凹凸がわずかに残る点も読み取れます。
表面プロファイルの比較では、Surface sample A は強化繊維由来の凹凸が前面に現れ、
Surface sample B は凹凸がならされて全体としてなだらかになっています。
ただし、面全体のわずかな「うねり」は残っています。型成形(Surface sample C)はほぼ直線でした。
平行度は
Surface sample A:0.738–0.867 mm
Surface sample B:0.413–0.622 mm
Surface sample C:0.122–0.865 mm で、いずれも 0.9 mm 以下でした。
■ 考察
まず課題としてあった、シーリング面としての実用性です。
レポートの値で見ると、Ra ≈ 3.48 という手仕上げ面の粗さは、
一般に接触面の目安とされる Ra ≈ 3.2 に近く、
FRPタンク等の液密用途でも十分狙えるレンジだと感じました。
さらに Rz と Pt も手仕上げで低下しており、局所的な凹凸(むら)が少ない面に近づいている点は、
シーリングの観点で心強いと受け取りました。
一方で、型成形と比べた絶対値はまだ大きく、
面の“使い分け”が実務上のポイントになると理解しました。
・厳しい粗さ要求や、うねり・平行度まで厳密に管理したい面 → 型成形を優先。
・要求が中程度で、現物合わせで密着を確かめながら進められる面 → 手仕上げ+検証でも現実解が見える。
そんな整理が、自分の中でクリアになりました。
ばらつきの扱いについては、手仕上げが平均的な粗さを下げつつ、
ばらつきも抑える傾向が読み取れました。
ここは作業の標準化(工具番手・工程順・検査ポイント)と相性がよく、
工程内検査の設計が効いてくると感じます。
受入れ条件を「目標粗さ+許容ばらつき」でセットにしておくのが良さそうです。
最後に、型成形サンプルのプロファイル傾斜について。
表面粗さは非常に良好なのに、
X方向で右肩上がりの傾斜が観察された点は興味深かったです。
レポートでは不飽和ポリエステル樹脂の硬化収縮
(一般に数%オーダー、7–8%程度)によるたわみが可能性として触れられていました。
実際、CMM 計測時のクランプでガタがあった所見もあり、
基準面側がわずかに変形していれば、型成形でもプロファイル傾斜が出得ると理解しました。
実際の要因は複合的だと思うので、ここは繊維配向や混錬状態の影響も受けるところで、
今後影響の強い順に潰していくのが良いと思いました。
<まとめ> ─────────────
3回を通してENG-REPORT-001を読み、この3回で一番つかめたのは、
「面の作り方は“用途と要求”から逆算して選ぶ」という当たり前だけど大事な視点でした。
シーリングを確実にしたい面、外観や基準面として厳密さが要る面、
そこまで厳しくはないが現物で密着を確認しながら詰めたい面、
それぞれで、型成形か手仕上げかの判断が変わる、ということです。
もう一つは、評価の軸を粗さだけにしないこと。
数値は入口で、最終的にはプロファイル(うねり・平行度など)もセットで見て
「その面が果たす機能」を基準に合否を決めるべきだ、と腹落ちしました。
図面や検査票には粗さ目標+プロファイル許容を並べて書くところからスタートしたいと思います。
運用面では、作業の標準化と記録が効きます。
工具番手・工程順・測定位置/回数・受入条件をあらかじめ決めて、
同じ手順で測って同じ言葉で話す。
そうすれば、結果の読み違いが減り、手直しのコストも下がるはずです。
最後に、プロファイルの傾きのように数字の背景が気になる現象は、
原因が一つとは限りません。
成形・治具・測定の条件を丁寧に記録し、必要な切り分けを小さく回していく。
今回の学びは、そのための“地図”になったと感じています。
<次回予告> ─────────────
次回は ENG-REPORT-002(Part 1)、
「繊維充填改善とボイド低減を実現する新工法成形体の評価」を取り上げます。
まずは「なぜこの評価が必要だったのか」
「現場でどんな困りごと(繊維充填・ボイド)が起きるのか」
「このレポートで何を明らかにしたいのか」を、整理していきます。
背景・課題・狙いを押さえたうえで、
Part 2以降の“どう検証したのか/何がわかったのか”へつなげていきます。
レポート本文はR&Dサイトの一覧からご確認いただけます:










