第6回:ENG-REPORT-002(Part 3)「繊維充填改善とボイド低減を実現する新工法成形体の評価」 ~得られたデータから見えた課題と応用可能性~

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2026年4月16日

 

第6回:ENG-REPORT-002(Part 3) 「繊維充填改善とボイド低減を実現する新工法成形体の評価」

~得られたデータから見えた課題と応用可能性~

 

<目次> ─────────────

 

・前回(Part 2)のおさらい

 

・結果・考察

 

・まとめ

 

・次の技術レポート予告

 

<前回(Part 2)のおさらい> ─────────────

 

こんにちは。

FRPカジR&Dセンター 入社3年目の山北 桜子です。

 

前回(Part 2)では、

一般工法と、詳細非公表の当社独自工法(新工法)で成形した部品を用意し、

外観検査とX線CTで内部を比較して効果を確かめる——という、検証の枠組みを整理しました。

 

今回はいよいよ結果です。

画像は掲載できないので、レポートに書かれている「見えていた差」を、

私なりに言葉で追いかけていきます。

 

技術資料はこちらからご覧いただけます。

・「繊維充填改善とボイド低減を実現する新工法成形体の評価」技術資料_ENG-REPORT-002

 

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<結果・考察>  ─────────────

 

1)外観でまず出た差(成形中の位置ズレのサイン)

 

レポートでは、脱型前の外観として、

一般工法のほうで凸部の角にバリが発生していたことが示されています。

 

これは、成形中に強化繊維の位置が不安定になっている可能性がある、という整理でした。

 

私自身、ここが最初のポイントだと感じました。

 

ボイドの話は「空気」だけに目が行きがちですが、

レポートの流れを見ると、まず「繊維が狙った場所に居てくれるか」が前提になっていて、

そこが崩れると角部のバリや樹脂リッチにもつながっていく——そんな考え方が読み取れます。

 

2)X線CTで見えた「内部品質」の差

 

X線CT画像の読み方として、レポートでは、

白:強化繊維/灰:マトリックス樹脂/黒:空気層(ボイド)と説明されています。

 

比較結果として重要なのは次の2点です。

 

・一般工法では、強化繊維とマトリックス樹脂の境界層に、断続的な空気層(ボイド)が確認されたこと。

 

・さらに、一般工法側では強化繊維の移動に伴う樹脂リッチ部位の増加が確認されていること。

 

「空気層がある」だけでなく、境界層に沿って断続的に続くという書かれ方が、

私は少し怖いなと思いました。

 

というのも、点のような小さなボイドなら「そこだけ」と捉えやすいのですが、

境界層は材料同士が接している大事な部分です。

 

そこに空気が連なる形で残っていると、局所的な欠陥というより、

力がかかったときに影響が広がりやすい「線状の弱点」になりそうだと想像してしまいます。

 

もちろんこれは私の受け止めですが、今回のレポートを読んで、「ボイドの有無」だけでなく

「形」まで意識して見る必要があると気づかされました。

 

3)数値として書かれている「空気層の大きさ」

 

レポートには、観察面ごとに空気層の寸法が複数記載されています。

 

たとえば概要では、一般工法側で最長断面寸法 8.34mmの空気層が、

深さ28mm以上に渡って断続的に存在した一方、新工法側では同一箇所に最長断面寸法 4.5mm、

深さ3.2mmを超える空気層は確認されなかったとされています。

 

また別の観察では、一般工法側で30mmを超える空気層が断続的に存在していた、

という記載もあります。

 

ここを読んで私が感じたのは、ボイドが「ある/ない」ではなく、

どの向きで切ると、どんな形で現れるかまで見ているという点です。

 

画像がなくても、文章と寸法だけで、内部欠陥の厄介さが伝わってきました。

 

4)「新工法は万能ではない」という結びの意味

 

結論としては、成形品の品質という観点で新工法に優位性が認められたと明記されています。

 

一方で、レポートの最後には

「今回の形状に対して適しているものであり、万能ではない」とも書かれています。

 

私はこの一文がすごく誠実だと思いました。

 

「新工法がすごい」で終わらせず、形状によって最適解が変わること、

そしてその判断を外観+非破壊(X線CT)で客観的に積み上げていくという

R&Dセンターのやり方が見えたからです。

 

<まとめ>  ─────────────

 

ENG-REPORT-002(Part 1〜3)を通して、私が掴んだ結論は次の2つです。

 

1つ目は、複雑形状では「脱泡」だけでなく「繊維の位置安定」が品質の土台になるということ。

 

外観で見えた角部のバリや、X線CTで見えた樹脂リッチ・境界層の空気層は、

そこが崩れると連鎖して起きる——という整理でした。

 

2つ目は、人の目の検査だけで終わらせず、

X線CTで内部品質まで確認して「工法の向き不向き」を言える状態にすること。

 

これが、技術相談や評価受託の現場で「判断の根拠」になるんだと実感しました。

 

 

<次回予告>  ─────────────

 

次回からは ENG-REPORT-003 を取り上げます。

 

「手作業による穴あけ加工精度測定結果」技術資料_ENG-REPORT-003 rev.1 です。

 

各種技術レポートはR&Dサイトの一覧からご確認いただけます。

 

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